1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

 そう、彼女は成長したのだ。  上司にどやされ、先輩後輩同僚に笑われても、ぎゅっと唇を噛み締めて耐えていた、気弱なOLはもういない。  権謀術数を目の当たりにし、政治のなんたるかを知り、甘いだけではない恋も覚えた。  彼女はもう、元の世界に戻っても、粘り強く世間を渡ってゆけるだろう。  皇太子が「行くな」と言って手を伸ばす。  その指先をかすめるようにヒロインの姿は粒子になって消える。  そうして、公園のベンチでOL姿のヒロインは目覚め、星空の下を歩き出す。  明日へ向かって。  ……いい。いいラストだ。  ヒロインとヒーローが結ばれるエンドが大好きな私には、ちょっと引っ掛かるところのある結末だが、この甘じょっぱさが、コメディテイストを彷彿させるタイトルとは裏腹にシビアで、いいのだ。  主人公はきちんと精神的に成長し、明日へ向かって歩き出す。十万字かけて描いた物語だけある。  と、そんな回想をしている間に、投稿フォームへの入力が全て終わった。  これはいけるだろう。なかなかいい賞を取るのではないか? イケメン達に囲まれたヒロインよろしくご満悦になりながら、送信ボタンを押す。  次の画面には、『投稿を受け付けました』の文字が表示され……、
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!