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そう、彼女は成長したのだ。
上司にどやされ、先輩後輩同僚に笑われても、ぎゅっと唇を噛み締めて耐えていた、気弱なOLはもういない。
権謀術数を目の当たりにし、政治のなんたるかを知り、甘いだけではない恋も覚えた。
彼女はもう、元の世界に戻っても、粘り強く世間を渡ってゆけるだろう。
皇太子が「行くな」と言って手を伸ばす。
その指先をかすめるようにヒロインの姿は粒子になって消える。
そうして、公園のベンチでOL姿のヒロインは目覚め、星空の下を歩き出す。
明日へ向かって。
……いい。いいラストだ。
ヒロインとヒーローが結ばれるエンドが大好きな私には、ちょっと引っ掛かるところのある結末だが、この甘じょっぱさが、コメディテイストを彷彿させるタイトルとは裏腹にシビアで、いいのだ。
主人公はきちんと精神的に成長し、明日へ向かって歩き出す。十万字かけて描いた物語だけある。
と、そんな回想をしている間に、投稿フォームへの入力が全て終わった。
これはいけるだろう。なかなかいい賞を取るのではないか? イケメン達に囲まれたヒロインよろしくご満悦になりながら、送信ボタンを押す。
次の画面には、『投稿を受け付けました』の文字が表示され……、
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