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 気づくと、あたしの前には彼がいた。  愛しい愛しい、あの人が。 「戻すのが手違いだったようじゃ。てへ。そなたはこの世界で幸せになるが良い」  てへ。じゃないでしょ、神様。  でも、今は。  私はあと5分の勝負に負けた。だけど、物語の中の彼女には、5分も10分も関係なく幸せになって欲しい。  これは私の編む物語だ。世間体ばかり気にして、私の納得ゆくラストにしなくてどうするのか。  だから、この物語はこう締めよう。 「ただいま、ですわ」  まだ呆然と私を見つめている彼の胸に、あたしは床を蹴って飛び込んだ。  うん。やはりハッピーエンドが最高である。
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