5分後の私は

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11月14日 23時55分。 あと5分…… あと5分で私は「西尾さん」になる。(私の気持ち的な意味で) 「籍は、11月15日 0時00分 に入れようと思うけどいいかな?」 半ば強引なプロポーズを2週間前に受けた。 11月15日、私の誕生日。 あと5分、私の29回目の誕生日が来た瞬間に私ははれて結婚する。彼氏の西尾君が記念日とか語呂合わせとか好きってこともあって、そう提案してくれた。 ちなみに西尾君は、「にしお」と読める「240」という数字が好き。 「いいの? 西尾君の誕生日の日でもいいよ? 西尾君1月でしょ? 2ヶ月くらいなら待ってもいいよ」  「ダメだよそれは。11月15日じゃなきゃダメなんだ」  「一番大事な人の誕生日に籍を入れると幸せになれるって、死んだばあちゃんが言ってたんだ」 「俺にとって一番大事な人は莉子ちゃんだからさ。母ちゃんも大好きで大切だけど、母ちゃんは2番だ。あとで母ちゃんには謝っておくよ」 西尾君の家庭は複雑で、両親は西尾君が3歳の時に離婚したため、お母さんが女手1つで育て上げたらしい。そのお母さんのシングルマザーで育っているため、西尾君はおじいちゃんという存在にあまり馴染みがないらしい。 それを西尾君は、不遇とは思っていない。ばあちゃんと母ちゃんが育ててくれたから俺は優しい人間に育ったんだって。 まだ、友だち関係の時にそのエピソードを聞いて、私は西尾君の事が好きになった。 「私にとって一番大事な人は西尾君だけど……私はいいの?」 少しだけイジワルな質問。でも西尾君の反応が見たくて。 「あっ……えっと……」 「大丈夫、莉子ちゃんのことは僕が絶対に幸せにする。それに神様は莉子ちゃんのような人にイジワルはしないと思うから心配しなくても大丈夫だよ」 「えへっ……そうなの?」 「僕は、神様は正直者が笑える世界を作ってくれてるって信じてるから」  
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