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微妙な三角関係
今まで、可愛いともてはやされていた美咲にとって、恭介の自分への反応は戸惑う事が多かった。
その度に美咲の心に湧き上がる不安。
『もしかしたら、恭介は自分の王子様では無いのかもしれない』
その不安に胸が押しつぶされそうになる。
それでも、今はもう…例え恭介が自分の王子様で無くても諦められない程に恭介を好きになってしまっていた。
「藤野君?」
突然黙り込んだ美咲を、心配そうに見つめる恭介の視線に美咲はハッとした。
「あ!そうだ。教授、LINE交換しませんか?」
必死に笑顔を作って言うと、恭介は呆れた顔をして
「急に黙るから心配したら、そんな事を考えていたのか?」
と呟かれた。
美咲は恭介の言葉に笑顔を浮かべ
「え?心配してくれたんですか?もう、教授ったら、やっぱり美咲の事が好きじゃないんですか!」
そう言って腕にしがみついた。
「だ〜か〜ら〜、抱き付くな!」
腕を振り払らわれ、美咲は頬を膨らませる。
「どうしてですか?美咲、本当に教授が好きなんです。どうしたら分かってくれるんですか!」
そう叫んだ美咲に、恭介は溜め息を吐くと
「藤野君、さっきも言ったけど…きみと俺は幾つ歳が違うと思っているんだ?」
と呟く。
「愛があれば歳の差なんて!」
「…」
「それに、案外付き合ってみたら、美咲の魅力に教授も気付くと思いますよ!」
「藤野君の魅力?」
「はい」
目を輝かせて言う美咲に
「俺には、きみのお尻にオムツが見えるんだが……」
眼鏡を人差し指で押し上げて返される。
しかし美咲はお尻を押さえて
「やだ!教授ったら!どこ見てるんですか?そりゃ〜、美咲のナイスバディに目が眩むのもわかりますけど」
そう言って恭介の背中をバシバシと叩く。
ああ言えばこう言う美咲の反応に、恭介は額に手を当てて
「めまいがしてきたよ…」
と呟いた。
すると美咲は嬉しそうに笑って
「やだ〜、そんなに魅力的ですか?」
って言いながら恭介に抱き着こうとする。
恭介は油断するとすぐに抱き着こうとする美咲に警戒していると
「ああ!」
っと、美咲が突然叫び出した。
恭介は頭を抱えたまま
「今度は何だ?」
と恭介が尋ねると
「LINE、交換しようって話が途中でしたよね!教授、スマホ貸してください」
美咲が微笑んで手を出すと、恭介は美咲の顔を見る。
「スマホ」
微笑んで手を出して無言の圧力を出す美咲に、恭介は笑顔を浮かべる。
2人は見つめ合い声を出して笑うと、美咲は笑顔を浮かべたまま
「ス、マ、ホ!」
って恭介に詰め寄る。
「……持ってない」
「え?」
「スマホを持ってない」
恭介の言葉に、美咲が恭介を見つめて絶句する。
「まさか……そんな訳……」
と美咲が言い掛けた瞬間、恭介の方から着信音が鳴る。
2人は黙って見つめ合い、再び声を出して笑い合う。
「教授?スマホ、持ってないんですよね?」
作り笑顔で言う美咲に
「藤野君のスマホじゃないのか?」
と恭介は答えた。
そんな恭介に美咲はにっこりと微笑み
「そっか〜、私のスマホか〜」
って言うと、美咲はスッと笑顔を消して
「私、教授との時間を邪魔されたくないので、音、消してるんですよ」
そう言うと、再び笑顔を浮かべた。
恭介も苦笑いを浮かべていると
「どうぞ」
って美咲が言い出した。
恭介が疑問の視線を投げると
「電話、出てください」
と美咲が微笑む。
「いや…持ってないから」
恭介が必死に苦しい言い逃れをすると、着信音が一度切れた。
ホッとしたのも束の間。
再び着信音が響く。
「教授?ここ、森の中ですよ。私の音じゃないなら、教授の着信音ですよね?」
笑顔で圧力を向けてくる美咲は
「出たらどうですか?急用かもしれませんし」
と言って微笑む。
恭介はイライラしながら
「誰だよ!こんな時に電話してきた奴!」
っと、小声で恨み言を言ってお尻のポケットから携帯電話を取り出した。
それを見て美咲は
「え!今時、携帯?」
って叫ぶ。
恭介にその声が聞こえていないらしく、美咲に背中を向け着信画面を見て笑顔を浮かべる。
「もしもし、片桐君?」
と話し出した恭介に、美咲が慌てた顔をする。
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