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そんな修治に美咲は溜息を吐くと
「ねぇ、修治。私が双葉教授を好きなの知ってるよね?」
と聞くと、修治は笑顔を浮かべて
「うん、知ってる」
と答えた。
「だったら、なんで教授とのデートの邪魔をするの?ノートだったら、明日でも良いじゃない!教授とのデートは今日しか無いかもしれないのに!」
と修治に怒った瞬間、美咲は恭介が居ない事に気が付いた。
「あれ?教授?修治、双葉教授は?」
キョロキョロと辺りを見回しても、恭介の姿が見えない。
修治は肩を窄めて首を傾げるだけで、全く当てにならない。
「もう!また逃げられちゃったじゃない!」
美咲はそう叫ぶと、修治の胸倉を掴んで
「全部あんたのせいよ!どうしてくれんのよ!」
そう叫んだ。
「美咲、怒るなよ」
ヘラヘラと笑う修治に、美咲は切り株に座り込み
「もう、私には時間がないのよ。卒業したら、双葉教授に会えなくなっちゃうの。そうなったら、完全に失恋しちゃうじゃない」
泣きそうな声で呟いた。
すると修治はそんな美咲の頭を撫でて
「大丈夫、既に美咲は振られてるから。教授、興味無いって言ってたよ」
と、言い出したのだ。
美咲は修治の言葉にピクリと反応して、ギロっと修治を睨み付けた。
「そんな事、なんであんたが知ってるのよ!」
「え?俺、美咲が大好きだから、教授に聞いたんだよ。『教授が美咲を好きなら、俺、美咲を諦めます!』って」
修治の言葉に、美咲は修治の胸倉を再び掴んだ。
「あんたね!なんで余計な事を言うのよ!」
そう叫んだ美咲に
「でもさ……教授、こう言ったんだ。『俺は人に興味が持てないから、相手が誰であろうと好きになる事は無い』って」
と、修治が続けた。
美咲は修治の胸倉を掴んだ手を離し
「美咲だけに興味が無い訳じゃないのね。だったら、もしかしたら興味を持ってもらえる日が来るかもしれないじゃない」
そう叫ぶと、美咲は首を振って弱気になる自分を奮い起こす。
「美咲に魅力を感じなくて好きになれないっていうなら諦めるしかないけど、美咲だけじゃないなら、まだ少しは可能性が残ってる」
まるで自分に言い聞かせるように呟く美咲に、修治は小さな溜め息を吐く。
修治も、美咲のこの明るさと底知れぬポジティブさに何度も救われている。
そんな彼女が大好きで、しかも恭介を追いかけている美咲を丸ごと好きだから仕方が無いと思っていた。
いつになったら、この三角関係は決着が着くのだろうか?と、修治も又、届かぬ思いに苦しんでいる1人であった。
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