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初めてカズを抱いた時、その不思議な感覚に俺は嵌った。
最初、不感症なのか、と思わせるほどの反応の悪さに引いた。
だがすぐ、俺じゃ不足なのか、と気持ちを焚きつけられた。
男によくあるプライドを賭けた変なチャレンジ精神だ。
そして時間をかけて解きほぐすうちに
カズは驚くほどの変化をみせた。
この時点では俺のプライドも十分に満たされていた。
ほらな、と。
そこから予想は大きく裏切られる。
カズは、これまでの女のほとんどがそうしたはずの常套手段を使わない。
媚びない。甘えない。そして求めない。
なのに
俺はもしかしたらとんでもなく凄い男だ、と危うく勘違いしてしまいそうなほど
深く鋭く俺に答え、悶え乱れるカズの身体。
飲み込まれそうな快感に頭ん中が白く靄る。
何も考えられなくなるほど夢中になりかけて、
ふと気が付いた。
「カズ」がそこから居なくなっていることに。
それと同時に「俺」を存在させてないことに。
ついさっき高々と祭り上げられた自尊心は、
突き飛ばされる勢いで奈落の底へと落とされた。
置き去りにされたかのような侘しさ。
なのに、
その孤独感が痺れとなって俺の全身を舐め回す。
それは本当に、それまでに感じたことのない奇妙な恍惚。
初めて知った快感だった。
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