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電話で呼び出され、ミキの部屋に来た。
いつものようにその身体に纏わりつこうとして拒まれる。
「もう、やめよう。」
ミキはきっぱりとそう言って睨むように俺を見る。あまりに突然で正直、焦った。
「このままじゃ、私、どうにかなりそう。カズの顔、まともに見られなくなってる。」
職場でも顔を合わせ、プライベートでも友達。苦しくないわけがない。
でも。結局、ミキでさえ、俺よりカズを取るのか。
何がそうさせるのか。
カズの、何が。
「ひとつだけ、聞きたいことがある。」
ミキがじっと俺の目を見て言う。
「カズのこと、本気なくせに、なんで…他に女が必要なの?」
本当のことは言えない。
俺にしかわからないことだからだ。
「男って、そんなもんじゃねーの?」
わざと馬鹿っぽくそう言ってへらへらと笑ってみせる。
振り返ろうとした瞬間、
ミキの平手が頬に飛んできた。
「ふざけないでよ。それ、強がってるつもり? 私が気付いてないとでも思ってる?」
ミキの下瞼が痙攣して、唇が怒りに震えている。
思い切り叩かれた頬がじわじわと痛み始める。
「馬鹿にしてる。私だけじゃない。カズのことも。」
寒空の下に追い出された俺は
打たれた頬を撫でながら、ミキがどこまで気が付いているのか考える。
わかってたまるか。
俺がどんなにカズを想っているか、なんて。
どんなにその愛を求めてるか、なんて。
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