prologue

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だが間違いは 所詮、 間違いだ。 どんなにうやむやにしようとも、 どこかで歪(ひずみ)が現れる。 繰り返す俺の間違いが、 カズを変えた。 疎かったはずが、 ほんの些細なことにも敏感になった。 柔らかで不思議だった感覚は、 ありきたりな俗っぽさをみせる。 はっきりとして強固だったはずの意志さえ、 緩くぼやけてきた。 俺の仕組んだ、勝手で姑息な方程式が、 カズの本来持っていただろう感性を、その情熱を、 すべて薄めてしまった。 カズはおそらくそんな自分の変わりようを爪の先ほども自覚してはいない。
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