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シゲとタケルが二次会はキャバクラだ、オネーチャンだ、と街へ繰り出すのを見送って、勇次と並びキッチンで後片付けをしていた。 「鍋パとはねえ…しかも女子ナシで楽しくやれてるコウタさんって……。」 勇次は感慨深げに呟き俺を横目に見る。 「…なんだよ。」 「人は変わるものなのですね。」 わざと一本調子でそう言い笑う。 「5年前のコウタさんに今のコウタさんを会わせたいです。」 「はは。まあ…もういいよ、そういうの飽きた。」 「そういうの、って…女の子に?」 「いや、中身のない付き合いに。」 「……知ってしまいましたからね、中身の濃いやつ。」 「濃かったね。…濃くて苦かった。まだ口ん中苦味が残ってるわ。」 苦々しい顔をして見せると勇次もつられて苦い顔をする。そして俺から目を逸らしたかと思うとぎゅっと目を瞑り声を上げた。 「あああーカズさん戻ってこないかなあああ!」 俺の代わりに叫んでいる、と思って俺は笑った。 でももう、戻ってくることを待ってなどいない。カズには素直な心で向き合える相手と幸せになって欲しい。俺も前を向き進むと決めた。 進む道の途中で、これから先の未来のどこかで、カズ以外の誰かを愛することがあるだろうか。 カズ以上に心惹かれ愛しいと感じる相手に、出会うことがあるだろうか。 もし、そんなことがあるとしたら、たとえそれがまた濃くて苦い思いだとしても感じてみたい。 今度こそ、愛というものに素直になりたい。
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