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ニーロと最後に仕事をしたのはもう随分前で、当時は二十歳そこそこ、業界でも注目株のモデルだった。 俺もカメラマンとしてはまだ新人だったが、月刊のメンズファッション誌から定期的に仕事の依頼が来るようになった頃でニーロとは多く仕事で絡んだ過去がある。 バイク事故で足を怪我をし、ショーモデルとして仕事をすることが難しくなったことを理由にモデルを引退すると聞いた時は酷く残念な気持ちでいたが、 こうしてまた別のかたちで共に仕事をすることになるとは、想像もしていなかった。 日本人の父親とフィンランド人の母親を持つハーフで、長身に端正なマスク、鍛えているのか程よく筋肉のついた引き締まった身体。 年齢を重ねて大人になったニーロはあの頃とはまた違った男の魅力を感じさせた。 「今だって現役でもぜんぜんイケると思うぜ。あの時は正直、辞めるなんて勿体ない、って思ったよ。」 「えええ!コウタさんにそんなに言ってもらえるなんて光栄ですよ。」 新人モデルのプロモーションに使う写真の撮影を依頼され訪れたのは レイと、レイが日本で在籍していたモデル事務所の元先輩モデル、ニーロが二人で起こしたモデル事務所『ウェイズ・モデルエージェンシー』だ。 「俺、あの頃、ショーモデルへの(こだわ)りが強くて…足、やっちゃったからまともなウォーキングできなくなって。」 「雑誌とか…他にも出るとこあっただろうに。」 「…なんでしょうね。変な(こだわ)りですよね。なんていうか…ランウェイを闊歩するあの感じ…。写真に撮られるのとはまた違う、独特の高揚感あるんですよ。だから、ショーに出られなくなって、すっかりやる気が失せちゃって。」 その後、大学を卒業して芸能事務所に就職したニーロは、そこでマネージャーとして仕事をしながら経験を積み、 こうしてレイと共に会社を立ち上げるに至った、という経緯だ。
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