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「ていうか…ホントのこと言うと。」
ニーロはそう言いながら左足を俺の前に出し靴を脱ぐと、膝の上あたりでパンツを引き上げ握った拳で足の甲を叩く。
コツコツ、と違和感のある音がした。俺の反応を窺うかのように上目遣いに見る。
「え…?」
「そん時の事故で指先、持って行かれちゃって。で、ここから先を切断です。最近の義足は良くできてて普段の生活にはなんら支障ないレベルですよ。車も普通に運転できます。」
「驚いたな…全くわからなかった。」
「知ってる人、ほとんどいません。それくらい違和感ないみたいで。俺も時々忘れてる時ありますしね。」
そう言ってニーロは笑う。やる気が失せた、なんて言葉は強がりで、仕事も上り調子のあの頃きっと悔しい思いの引退だったに違いない。
でなければモデル専門の会社を作るなんてことにもならなかったはずだ。
「で、撮影なんですけど…」
ニーロの声で我に返る。
「営業先に置いて帰れるような小冊子のちょっとした写真集的なものを作ってみようと思ってまして。」
「…写真集。」
「スアンのいろんな面が見えるようなイメージ写真というか。ファッション誌を想像させるような感じに。」
「ああ、いいね。そのまま使いたい、って思わせるようなの撮ろう。」
「レイもそう言ってました。コウタさんに任せればそういうのできるって。レイの提案ですよ、この企画。」
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