prologue

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「ひょっとして、寝てたのか?」 「寝ようと思ってた。」 時計を見る。12時を少し回ったところだ。 逆算すると、さっき女のところで潰した時間は正味2時間くらいになるだろうか。 「なんか…飲むものない?アルコール。」 酔っ払ってることになっているが、今日はまだ一滴も酒を飲んではいない。 「ビール、さっき全部飲んじゃったんだよね…ワインならあるけど…」 「ワイン。飲む。」 カズはしぶしぶ、といった表情で立ち上がるとキッチンへ向かう。 カズとはもともと学生時代からの知り合いで、 よくツルむ仲間のうちの1人だった。 卒業後、仲間とはほとんど疎遠になっていたが、 カメラマンで食っている俺と、スタイリストのカズは、 仕事の現場で会う機会がたまにあった。 何度か飲みに誘って話をするうちに、 ちょっと不思議な感覚のこの女に興味を持った。 学生の頃からその天然ぶりを感じていなくもなかったが、 どちらかというと苦手なタイプだったかもしれない。 フリーのカメラマンとして仕事を始めていたことと 離婚して後、精神的にも自由でいられた時期だったからか、 俺自身の感覚もあの頃から少し変化していたのかもしれない。 フリーランスで仕事をすることを夢みているカズは、 今のところ仕事が生活のすべてだ。 適齢期もとっくに過ぎているというのに 「結婚」の臭いをさせない。 どころか、俺の誘いを受けなければ、この先、 オトコさえできなかったかもしれない。 いや、 決して女らしくないとか、そういうのではなく。 たぶん、 フツウのオトコが喜びそうなコンテンツがカズには無い。 これはあくまでも表面的に、だ。
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