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納得してのこととはいえ、弥生との離婚は心にぽっかりと穴を開けた。
別れたい、と切り出した弥生の言葉にはすんなり応じることができても、
当時二歳だった息子、亮太との別れは胸が引き裂かれるような痛みと拒絶があった。
親権を取ることも本気で考えたが、
亮太の年齢、俺の仕事の状況、どう考えたって無理だった。
むやみに弥生と争って精神的に傷つけあうことなどしたくはなかった。
離れても、親子であることにかわりない、そう自分を無理矢理に納得させた。
亮太とは、月に数回会う機会を与えられていた。
育ち盛りだ。会うたびにその成長ぶりが見て取れる。
その成長の日々に拘れないことが俺をひどく空しくさせていた。
そんな心の隙間に、ミキの重すぎるほどのその想いが滑り込んだ。
あの時は、その重さがしっくりと馴染んだ。
それほどに俺も深く沈んでいたんだと、今になって思う。
弥生との離婚後、何度と無く連絡をしてきたミキは、
学生の頃よりも積極的に俺への想いを訴えてきた。
最初のうちは何とかかわせていたが、三年ほど経ったある日、飲みに誘われその晩、
酔った勢いでミキを抱いた。
それが始まりだった。
きちんとした約束も無いままに続けられていた関係は、それはそれで心地良かった。
ミキの想いのほうが強かっただけに俺はいつも優位でいられたからだ。
止めようと思えばいつでも終われる関係だと安易に考えていた。
でも間違いだった。
カズに本気になって、
そこからはますます間違いだらけだ。
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