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 思えば、更正なんて言葉がおこがましいほど犯罪を犯してきた。  今、この寒空の下、ひとつひとつ挙げていくのは身に堪える。  法を冒し、他人に迷惑ばかりかけてきた者が今更なにをか云わん。そう言われたら、返す言葉はないさ。勘弁してくれ。勘弁してください。それとしか言いようがねえよ。  不思議なもんだ。  食うものに困れば、人間は何でもやるのさ。小さな過ちを繰り返せば、人間は徐々に大きな過ちへと向かっていくんだ。その瞬間、何も思うことはない。問い詰められれば、仕方がないだろうが、と怒鳴るだけだ。  それでいて、こうして時が経ち、過ちを振り返ると身震いする。勝手なもんさ。傷つけた他人の怯える顔を思い出すと、悪かったと思うのだ。身勝手だよなあ。  帰る家など無い現実を突きつけられると、過ちを犯さなければこうはならなかったのだと、しんしんと思う。  だが、遅い。  もう、遅いのだ。  58歳だ。  今更、無理なのだ。  こうして、悔い、心を正そうと歩き、それでもまた、腹が減っては手を黒く染めるのだろう。  なぁ、どうすれば良い?  独りごちて空を見上げた。  雪が落ちてきた。真っ白な雪だ。  ああ、そうか。  それでも、天は白く染まれと言うか。  ふと、歩道の生け垣に飲みかけのペットボトルが見えた。椿が桃色に咲いている隣に、汚ならしく突っ込まれていた。  生け垣の前でしゃがんだ。  この椿のように、周りは皆、綺麗に見えたもんだ。羨ましいと唾を吐いてきた。このペットボトルのように。  なんと汚ならしいことか。  ペットボトルを引き抜いてみた。隣で咲いていた椿の花弁が全て、咲いた。あはは、と笑ったんだ。俺ぁ、こんなちっぽけなことで、良いもんだなと、笑ったんだ。
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