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 集会所では、西ノ浦町内会の会合が行われていた。  小さな町内会でも議案は多々ある。この日は第一公園に居つくホームレスについて話し合うことになっていた。  年の瀬の見回りは誰某(だれそれ)が行くとか、来年の餅つきはやるのかやらないのかなど、どうとでもなる話題がだらだらと流れ、やがて会合は本題へと入った。 「それで、第一公園のことだけどね。ホームレスが居ついてんだよね」  町内会長が腕組みしながら鼻を鳴らした。 「そうそう、あれは困ったな。こんな寒いし、ベンチで死なれちゃかなわん」  皆が、うんうんと頷くなか、一人がぽつりと言った。 「……あのホームレスな、あれ、たぶん高井じゃねえか? 高井竜太(たかいりゅうた)。あの、あれだよ、ここでやりたい放題やって捕まった」  集会所が一気にざわめきたった。 「あの高井竜太かよ。あんなの第一級の犯罪者だよ。出所したのか。あんなの、よく地元に戻ってこれるな」 「他に行くとこねえんだろ。あのどうしようもない母親も、ずっと昔に死んだろ? それで第一公園しか行き場がねえんだ。迷惑な話だよ」 「いや、お前知らないのかよ。あいつが母親殺したんだぞ」 「あぁ、そうだそうだ。頭がおかしいんだろうな。そこに戻ってくるなんてよ」 「それで地元でゴミ拾って飲み食いして、飢え凌いでんのか。どうしようもねえな」 「それより、怖いですよ。子供たちを遊ばせられない」  掃き出すような言葉が飛び交った。  第一公園での一人遊びを禁止するか、回覧板で注意喚起するかなど、議論は白熱した。結局は、なんで犯罪者にこちらが注意して過ごさねばならないのか、犯罪者の方が出ていくべきだ、との話に進んだ。 「まあ、役所に相談するしかないんだろうな」  町内会長がまた鼻を鳴らして、そう終わらせようとした。 「……あの……すみません」  今年委員になったばかりの若い父親がそっと手を挙げた。
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