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1 熱狂と衝動
入口で貰ったドリンクチケットには、ライブのチケット代と別でお金がかかると知らなくて驚いた。
金髪の華奢なバーテンダーは、僕をちらちらと見ながら様子を伺っている。早く選べよ。と思われていそうで変にプレッシャーを感じた。
「じゃあ、コーラをください」
自信の無さそうな声で注文すると、
バーテンダーは無言で、プラスチックのコップにコーラを注いで、僕に渡してきた。
無愛想な表情は、どこか怒っているようにも見えた。
ありがとうございます。と小声で言ってから振り返ると、ステージがあった。
ドラムと、アンプというのだろうか。大きな機材がいくつか並んでいて、左右には大きなスピーカーがドカンと積まれていた。
ビルの7階にある小さなライブハウス【Light】。
20畳ほどか。思ったよりも狭いなと感じた。
そしてコーラは何だか薄いなと感じた。
「お!ソウタ!」
入口の方から声がした。
いつも学校で聞く声だ。声の主はサダだと直ぐに分かった。
サダは小汚いラグランTシャツにジーパンを履いていた。
天然パーマの髪の毛をターバンでまとめていて、学校の時と少し雰囲気が違って見えた。
大袈裟な程に僕に手をふり、とびきりの笑顔でサダは近づいてきた。
「サダくん。何だか、学校と雰囲気違うね。」
「そうか?まぁ、学校のときより何億倍もかっこいいぞ今日の俺は!」
サダはいつも声が大きいが、今日は特に大きかった。
本当に心から嬉しいのだと、声色が熱心に語ってくれてた。
俺のファンにしてやるから、絶対目離すなよな!
と言いながら、サダは控え室へと消えていった。
サダは、直ぐに居なくなる。
自分が言いたいことだけ言って、話したいことだけを話して、直ぐにどこかへ行ってしまう。
今日の誘いを受けた時だってそうだった。
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