歌えないのに…

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歌えないのに…

 みんなの前で歌を歌えなかった私。  だけど音楽の時間に歌うのは、大丈夫になった。  だから、。  だから、大丈夫だった。  小4の音楽会でアルトパートになった私。  ある日担任が、 「アルトの声が出てない」  と、アルトパートの全員を立って歌を歌わせ、 「歌声が聞こえた人」  の名前を呼び、座らせる、なんてことをした。  誰か座るたび、全体の歌声は当然小さくなる。  私の歌声も小さくなる。  私はどんどん心臓の速度が加速した。  4人、3人、2人と残り…  やがてもう1人残っていた人も、座らされ…  残ったのは、私だけ。  …歌わなきゃ、歌わないと殴られる…  泣きながら声を震わせて歌っていた。  みんながじとっとした目でこちらを見ていたから、余計に惨めだった。  担任はたぶんこうするために、わざとこんなことをしたんだ、と当時思っていた。  …なんで私は、うまくしゃべれないんだろう。  なんでこんなにも、人前で歌いたくないのだろう。  自分にも、何がなんだか分からなかった。
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