飲めないたまごスープ

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飲めないたまごスープ

 年少組の頃。  給食を食べられなくなったらしい。  当時のことはあまり覚えてないが、おそらく組の誰かに、食べ方をからかわれたのかもしれない。  もしくは人目が気になり、食べられなくなってしまったのか。  私は物心づいた頃から、人の視線が気になって仕方なかった。  当時の組の先生が、なんとか私に給食を食べさせようと頑張っていたらしい。  ストローを使ってスープを飲ませようとしたり。  私が唯一覚えているのが、ゆらゆらとき卵が揺れるたまごスープを、先生が食べるよう促していたことだ。 「ほら、たまごスープだよ?」  先生はそう言っていた。  それから私は給食を食べられるようになったらしいが、食べられるようになったとき、先生が泣いて喜んでいたらしい。
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