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「はあー!?」
静かな病室に、あたしの声が響き渡る。
「ちょ、ちょっと!また看護師さん来ちゃうよ!!」
南野さんが小声で言ってくるけど。
知るかー!!
いきなり自分の代わりに小説書いてみろとか言われたあたしの身にもなってよ!
大体、あたし小説なんて書いたこともないし!なんならあんまり読まないし!国語の教科書でちらっと読む程度だし!それにしたって内容なんて覚えてないし!
そんなあたしに、小説を書けだって?無理無理。頼む相手は選んだ方がいいよ、南野さん。
ていうかさ、全然関係ない話だけど、別に南野さんは小声で喋らなくてもいいんじゃない?あたしにしか見えてないってことは、あたしにしか聞こえないんでしょ?多分。
まあ、それはいいとしてさ。
「書けるわけないじゃん!」
小さい声であたしが言い返すと、南野さんは一瞬キョトンとしたあと、笑いながら言った。
「ああ!僕が文を話すから、君はそれをタイピングしてくれるだけでいいよ。入院中だし、暇でしょ?お願い、手伝ってよ」
あたし、タイピングとか出来ないよ……パソコンなんてほとんど触らないし。大体、そんなめんどくさい頼みは聞きたくないなぁ……
「えー……」
あたしが小声で言うと、あたしが嫌がっていることを察したのであろう、南野さんはいやーな笑い方をして言った。
「あたしに出来ることだったらなんでもって言ったよね?別に僕は航空機の操縦をしろとか外国へ行って石油を掘り当てろとか言ってるわけじゃない。ただタイピングしてくれって言ってるだけだよ?」
うーわ。脅して来やがる……くそぉ……
「あーもー、やればいいんでしょ!言っとくけど、あたしほんっとタイピング遅いからね!それでもいいならやってやるよ!」
ヤケになって叫ぶと、南野さんは嬉しそうな顔をした。ふん、やってやるよ!!
そう思っていたら。
「病院では静かに!」
通りがかりの看護師さんに怒られちゃった……あーあ。
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