合コン

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合コン

「マサ、女の子達は?」 「あと10分くらいで到着だってさ。」 「今日は3対3だったよな?男側のもう1人は?」 「ちょうど今来たぜ。」 マサの指差す方角を見ると、ホストみたいな見かけの男が入店してきた。マサを見つけると手を挙げ歩いてきた。 「あなたがマサタカ君の幼なじみ、ダイスケさんですね。僕は星夜って言います。今日はよろしく。」 言葉遣いは丁寧だが、名前までホストみたいで俺は非常に驚く。マサの耳元で俺は囁く。 「今回のイケメン担当はこいつだろ?なんで俺を呼んだ?」 「仕方ないだろ?頭数が足りなかったし。」 真ん中の席にマサ、マサを挟む形で入口近くの席に星夜、一番奥の席に俺が座った。 やがて華のある女の子達が入店してきた。 「こんにちは!よろしくお願いします!」 マサが言う通り、たしかに街中を歩いていればスカウトでも受けそうなレベルの美女が揃っている。今時のファッションに身を包み大きな胸を気持ち悪いくらいに露出させている。男の目を自分に引きつけたいという魂胆が丸見えだ。 しかし、1人だけ2人とは異なる印象の女の子がいた。その子のファッションは2000年代初頭で止まっていた。容姿は他の2人に劣らないが、地味な薄化粧と小ぶりな胸、古風な美しさで他の2人とは別の雰囲気を醸し出していた。 随分と個性的だった為、その慎ましやかな彼女の姿を見ていると偶然にも目が合った。俺は軽く会釈すると、彼女は俺を見るなり目を逸らし何食わぬ顔で席に着く。ジロジロと見ていたから嫌われたかもしれないと俺は反省する。 「じゃあ、みんな、とりあえず適当に飲み物を選んで?」 マサがメニューを広げ飲み物を選ぶように促す。みんなが飲み物を選ぶ中マサが俺に小声で話しかけてくる。 「ダイスケ、どうだよ?あの時代錯誤ちゃん。」 マサが風変わりな女の子を指差す。 「時代錯誤ちゃんって言い方は失礼だろ?どうって何が?」 「あの子だよ、ダイスケがいなければ参加しないって言っていた女の子は。」 「本当か?さっき目を逸らされたけど。」 「気のせいだろ?誘った時はダイスケの写真をマジマジと見ていたぜ。まあ頑張れよ。」 マサのそんな話を聞きながら待っていると飲み物が到着し自己紹介タイムが始まった。マサが幹事として挨拶を済ませた後、俺に自己紹介を促してくる。自己紹介は俺が嫌いなことの1つだが、合コンにおける通過儀礼はこなすしかない。 「こんにちは、ダイスケって言います。年齢は29歳です。地元の高校卒業後はコンビニでアルバイトをしながら暮らしています。趣味はバイクに乗ることで、休日はツーリングによく行っています。マサタカとは幼なじみでツーリング仲間でもあります。今日はよろしく。」 挨拶を終えると明らかに女性陣の動揺が見て取れる。『29歳にもなって・・・アルバイト?』という表情で女の子は俺を見ており、この視線が痛い。 「じゃ、次は僕ですね。僕は星の降る夜と書いて星夜って言います。年は2人と同じ29歳です。医者として働いていて来年は独立する予定があります。良いパートナーを見つけたいと思っているので、今日はよろしく。」 その自己紹介を聞いて女の子達の目の色が変わる。今日の主役が決まった瞬間だ。男達の自己紹介が済み女の子達の自己紹介が始まる。 「アタシはミキです!24歳で彼氏募集中です。仕事は看護師をやっています。星夜さんとは結構お話合うかもです。よろしく。」 ミキは星夜にウィンクして猛烈なアピールを繰り広げた。 「ウチはリナって言うよ。年は23歳で同じく彼氏募集中やねん。関西出身なんで少し(なま)りが残っていると思うけど、許してなー。友達が関西の大学の医学部で勉強しているから、少しは星夜君とも話できるかなって思うわ。どうぞ、よろしゅー。」 リナは無理やり星夜との接点を自己紹介に盛り込んできた。ただの知り合いでも勝手に友達と定義すれば、その知り合いは友達になる。友達とは便利な言葉だ。 最後に風変わりな彼女に自己紹介の順番が回ってきた。 「(わたくし)は、峰沢幸江(みねざわ さちえ)と申します。年齢は24歳です。趣味は、・・・そうですね、バイクは少し興味あります。・・・宜しくお願い致します。」 丁寧な口調や雰囲気とは裏腹な趣味を盛り込んできた。人は見かけに寄らないと俺は思った。 「乾杯!!」 お酒が入って随分と盛り上がり雰囲気も和やかで打ち解けた感じになってきた。食事も運ばれてきて、いよいよ合コンらしくなってきた。 「星夜さん、お医者さんなんですよね。頭が良くて、それを使って患者さんを助けるあなたを、アタシは医療関係者として尊敬します。」 ミキはその豊満な胸を星夜に押し付け上目遣いで誘惑する。 「いやいや、そうでもないよ!まだまだ未熟ものだからね。」 「ウチもすごいと思うわー、友達を見ているからその苦労とかが目に浮かぶねん。ホンマ、偉いと思うわー。もっと君のことを教えてなー」 リナも同じく胸を押し付け星夜に密着する。 2人の女の子のアプローチに星夜は鼻の下を伸ばす。 「ありがとう、最終的には父の病院を継ぎたいと思っていてね。」 「すごーい!!」 この時点で俺達は蚊帳の外である。女の子は俺やマサに興味はないようだ。星夜を呼ぶという選択は失敗だとマサも頭を抱えている。 星夜と女の子達の会話だけが盛り上がるが、ミキが思い出したかのように俺に話を振ってきた。 「ダイスケさんって、どこかで見たことある気がするよねぇ?どこかで会ったことありますか?」 「そうやね・・・ウチもこんなイケメンなら忘れないと思うで。どこかで会ったことがあるんとちゃう?」 そろそろだと思っていた。この弄りが来るのは。 「・・・まあ、よくある顔ですから。」 俺は取り繕った笑顔で全力の演技をした。何度も経験した場面だし演技には自信があるのだ。 「そうかい?僕も初対面のはずだけど、たしかに会ったことある気がするんだよね。どこだったかな?」 俺はため息をつき、早く合コンが終わらないかと思いながらお店の時計を見上げると、先ほど俺から目を逸らした幸江(さちえ)が俺を凝視していることに気がついた。 彼女に悟られないように様子を窺うと、他の女の子2人が話している中、ほとんど何も話さずジッと俺を見つめている。しかし、俺が彼女の目を見ると、またしても彼女は咄嗟に目をそらす。 再び携帯を見るフリをして彼女の様子を窺っていると、やはり彼女は俺を見ているようだ。いったい何なのだろうかと思う。そんな彼女の様子を気にしながら合コンはお開きとなった。 「今日は楽しかったね。」 「星夜さん、もう少し飲みたいな。」 「オッケー、それじゃ次のお店に行こうか?幸江(さちえ)ちゃんも二次会来る?」 「いえ、結構です。」 どうやら風変わりな彼女は参加しないらしい。一応星夜も声はかけたが、最初から期待はしていなかったのだろう。星夜は『またね』と軽く挨拶をしミキとリナを連れて夜の街に消えていく。
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