殺魔師はじめました!

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殺魔師はじめました!

僕は寺井優馬。公立高校に通う高校2年生。 17才だ。 僕の家は魔物に取り憑かれた人達の中でももう取り返しがつかないーーつまりはもう普通の人間には戻れる見込みのないーー元人間とでも呼ぶべき人達を速やかに抹殺して、それ以上魔物達に狂わされる人が出ないように食い止める、という退魔師のような、そうでないような仕事を代々やっている。 そして、この夏遂に僕も家業を手伝う事になった。 一応普段から魔物退治の訓練を受けてはいたけれど、実際に魔人(うちではもう人間に戻れないステージの人をこう呼んでいる)を殺すのは生まれて初めてだ。 今回僕が抹殺するのは、表向きは商社に勤める エリートサラリーマン、しかし、その裏では他人の生気をその人が絶命するまで吸い尽くす、という魔人である。 元々は、姿形の定まらない怨霊だったものが、長い間人に取り憑き悪さをする事で、人の形をした闇、としか呼べないような存在へと進化した。 もう既に何人も犠牲者が出ており、異常に気づいた家族が拝み屋に依頼するも、とても手に終えない、という事で僕の家に声が掛かった、という訳だ。 ……そして、今僕は奴が狩り場としている、 とある公園にやって来ていた。 時刻は午後10時を少し回った所。 事前の調査では、この公園はよくベンチなどで深夜にカップルがいちゃついているらしく、奴はその手合いを狙っているという事だった。 ……いた!!アイツだ!! 僕が公園の茂みに隠れて張っていると、ブランドもののスーツを身に纏った奴が姿を現した。 茂みの陰から見ていると、落ち着きなく周囲に視線を向けている。獲物を物色しているって所か。 しばらくして、奴は何かを見つけたように早足で公園の奥の方にあるベンチへと向かった。 その後を足音を殺して僕も追いかける。 ちなみに今回の仕事は僕一人でやることになっていて、どうしてもヤバい時は公園の外で様子を伺っているうちの父さんが助けてくれる事になっていた。 「もうっ!亮くんったら、エッチ!!」 「おいおい!お前だってこういうの好きなくせによ!」 公園の奥のベンチで、けばけばしい化粧のキャバ嬢らしき若い女性とその彼氏らしき金髪の軽そうな男がイチャイチャキスしたりしている。 カップルは彼らの横方向から向かってくるスーツの奴には全く気づいておらず、イチャつく事に夢中になっている。 奴が真横まで接近した所でようやく男の方が気づいて、 「おら、てめぇ!何見てんだよ!!ぶっとばすぞ!!」 と凄むけれど、もはや人間ではない奴はそれを無視してジッと女の方を見つめている。 「おい!!てめぇ、聞いてんのかよ!!」 男が奴の胸ぐらをつかんで怒鳴り飛ばすと、奴はその正体を現した。奴の体はみるみるうちに闇色の人外のものとなり、男は思わず手を離して尻餅をついて後ずさる。 「いやぁーーー!!化物~~~~~!!」 その後ろで女が金切り声を上げた。 「グゥアッバアアッッッーーーー!!」 奴が大きく口を開いてその凶悪な闇色の牙をむき出しにしたその瞬間、僕は奴とカップルの間に割って入った。 「待てっっっ!! これ以上お前の好きなようにはさせないぞ!! そこのカップルっ!!さっさと逃げろっ!!」 僕が怒鳴り付けると、我に帰ったカップルは 一目散に逃げていく。 「グルルルルッッ!! 小僧っ、どうやら貴様死にたいらしいな!!」 闇色の鋭い爪で奴がこちらに襲いかかってくる。 すんでのところで身をかわして、僕は腰に差していた日本刀を抜き放った。 常夜灯に照らされて、ギラリ、とその刀身が光る。 「参るっっ!!」 僕は上から振りかぶってくる奴の両手の爪を避け、奴の側面からその胴へと刀を真横に薙いだ。 シュッッ!!、という音を立てて奴の体が真っ二つになり、ドサッと芝生の生えた地面に落ちる。 「……グアアアアアッッッ!!貴様っっ!!」 地面に上半身だけで這いつくばりながら、奴が再びこちらへと爪を振りかぶった。 ……ブシュッッ!! その爪が振り下ろされる、その前に僕はすかさず奴の脳天を串刺しにした。 「……グ、アアッッ…………。」 ……そして今度こそ本当に、奴は息絶える。 パチパチパチパチ。後ろから父さんが拍手しながら現れて、にこやかに僕に言った。 「これでお前もようやく一人前の殺魔師だ!! よくやったな、優馬!!」 こうして僕は殺魔師としてのスタートを切ったのだった。
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