加藤緋真

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夕方のカンファレンスを終え、急患や入院患者の急変の無いことを祈りつつ、ひたすら書類を片付けたり、患者さんの様子を見に行ったりしていた。 (水野になんていうか…参ったな) 相川は勿論、加藤の事はこれまで看護師の中の1人としか思ったことがなかったため、余計に困惑した。 相川は医師になって長年経つ、人と、命と接するという仕事上、人が自分に向ける人の気持ちはある程度見ればわかる。 羨望、妬み、男女問わずの尊敬、敬愛、何故死なせたと当たりどころをなくして怒る人、治って退院していく際にされる感謝、医師と知れば高収入だからと寄ってくる女性、そして陽性転移、全てよくある事なのだ。 書類を終わらせ、ぼんやりと考えていると少し眠たくなる。そんな時、相川のPHSがなり始めた。 「はい、相川です」 「お疲れ様です先生、佐藤です。急患です」 「状況は?」 「男性、出血多量、胸部の圧迫骨折、打撲多数です。」 「すぐ行く」 医師の休憩は短い。早足で手術室に向かう。 術後、時刻はとっくに深夜24時になっていた。仮眠室に籠りスマホを見ると珍しく水野から2時間前に連絡が来ていた。嬉しいはずの水野からの連絡に付き合ってそうそうこんな事になろうとは。と、相川は頭を抱えて項垂れた。 【日曜日お時間ありますか?】 という文章。 気まずく感じた相川は見なかったことにしてスマホをしまい、横になった。 「参ったな…」 そう呟くがその声はしんとした室内に響きもせず外から微かに聞こえる話し声にかき消された。 そっと瞳を閉じて考え込んだ相川はいつの間にか意識を失うように眠っていた。 この時、相川にひとつの足音が近づいていたが相川は知る由もなかった。
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