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「落ち着いてください。大きく息を吸って、吐いて、吸って、吐いて……」
ママでもパパでもない女性の声がします。きっと助産師さんです。ママが大きく息を吸うのと同時に、子宮内もびくんと揺れます。
──あぁ、私は本当に生まれてしまうのですね。
今更になって不安が募ります。私が生まれたら、名前は何になるのでしょう。パパが既に決めているようでしたが、ママに秘密にしているので、私も知りません。
変な名前だったらどうしましょう。
花子とか、桃子とかだったらどうしましょう。時代錯誤な名前で、将来彼氏ができないかもしれません。
いえ、まだ花子と桃子は良いです。キラキラネームとかだったら目も当てられません。”月星”と書いて”きらり”とかだったら、彼氏どころかまともな友達ができないかもしれません。就職先でもネタにされて、いじめられてしまうかもしれません。(全国の花子さん、桃子さん、月星さん、ごめんなさい。私はまだ世間知らずなんです。無礼をお許しください)
あぁ、お願いパパ。可愛い名前にしてください。どうかお願いします。
私が生まれるまで、あと3分です。
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