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少しだけ、外の眩しい光がさしこんできました。
これが外の光。あの光の中に、あと2分もしないうちに飛び込んで行かなくてはいけないなんて。怖いです。
手足ばたばたに拍車がかかります。
「……良平……赤ちゃん、もうすぐ生まれるね」
「あぁ、そうだな。今が最後の辛抱だぞ」
「わかってるわ……んっ」
外から、優しく撫でられる感触がしました。もうあれこれ考えている時間もありません。覚悟を決めなくては。
そもそも私は男の子? それとも女の子でしょうか?
どちらにせよ、生まれたら大声で泣かなくてはいけません。発声練習はしていませんが、無事に泣けるでしょうか。声が小さくて、心配されないでしょうか。
生まれて、私はパパとママから、ちゃんと愛してもらえるでしょうか。
生まれたことを、喜んでもらえるでしょうか。
──あぁ、わかりません。ひょっとしたら、私は望まずに生まれてしまう子かもしれません。パパとママはどんな気持ちで私を生んでいるのでしょう。
私は、生まれても良いのでしょうか。
不安で、不安で、堪りません。
「……ねぇ、良平」
「な、なんだ。陽子」
パパとママが何か喋っています。ひょっとして、私の陰口を言おうとしているのでは──。
「私、怖いの」
私が生まれてくるまで、あと1分。
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