ターちゃん

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この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 1999年の春、暖かく晴れ渡った4月の終わりの午後だった。僕がバイトしているスナックに週に2、3回訪れるA氏に頼んで、彼女と会うことになった。彼女が待ち合わせ場所として指定したのはアルタの前だった。僕たちは、彼女がうちの店で開かれたA氏の誕生日パーティーに来ていたときに初めて出会ったのだ。正確には、僕が彼女を初めて見たということになる。 約束の時間は4時。携帯電話片手に横断歩道を渡ってくる人たちが、それぞれの待ち合わせ相手を見つけて僕の前を通り過ぎていく。 彼女の携帯番号を知らなかった僕は、ちょっぴり不安な面持ちで、胸は期待に高鳴り、片足でコツコツとアスファルトを踏みならしながら待っていた。 絶え間なく通りを走る車や人混みに目を向けていると、大型ビジョンから宇多田ヒカルの「First Love」が大音響で流れ出し、周囲をセンチメンタルな気分に包みこんでいく。その中で、ノースリーブの上に羽織るジャケットを片手に持った彼女が現れたのである。 ため息が出るほど素敵で、僕の目は彼女に釘づけになった。くっきりとした眉毛に、パッチリとした目、ロングヘア。身体も理想的でグラマラスな身体だった。 僕は魅入られるように、彼女のそばまで近づいて行き、挨拶をした。 「あ、どうも」と言って、照れたように頭を下げた。 白木貴子は、僕より2つ年上で、気品があり、顔立ちは派手だけど気取ったところがまったくなく、これまで会った誰よりも話しやすかった。
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