雨宿りには苺を添えて

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  「せ、せめて、企画書だけでも目を通していただけませんか……!」  それでもみのりは両足を踏ん張ると、食い下がった。  これまでだって何度も、営業先で邪険にされたことはある。  何度も嫌なことを言われたこともあったし、今のように冷たい態度を取られたことも日常茶飯事だ。  だから、こんなことはもう慣れっこだ。  悔しい思いをするのも、今のように冷ややかな目を向けられることにも──残念ながら、もう慣れた。 「読んでいただけたらきっと、弊社の媒体に広告を掲載する魅力をわかっていただけるはずです!」  こうなったらもう、しつこく、何度も何度も頭を下げて頼み込むしかない。  なぜならそれが、みのりの仕事だからだ。  今、ここにいるみのりが、やらねばならないことなのだから。  だからみのりはとにかく必死に、亮二にすがりついた。 「必要ない」 「で、でも……っ」 「じゃあ逆に聞くけど、お前はどうしてうちの店に広告が必要だと思うんだ?」 「え……」 「金を払ってまで広告を載せるには、それ相応の理由があって然りだろう」  腕を組み、顎をツイッと上げた亮二は、淡々とみのりに尋ねた。  背後にはゆらゆらと黒いオーラを背負っているようにも見える。  まるで、悪魔だ。  ついさっきまで優しかった分、落差がすごい。  
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