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「ど……どうしても、ダメですか?」
「しつこいな。そもそも自分が一度も商品を買ったこともない店を、赤の他人に自信を持って勧められるのか?」
「それは……っ」
真っ当な指摘だ。やっぱり返す言葉が見つからない。
さっきから、ずっとそうだった。
亮二が言うことは正論ばかりで、みのりの返事はすべてその場限りの薄っぺらい弁明ばかりだった。
「というか、そもそも、そんなにノルマに追い詰められてるなら、今後のこともあるだろうし、一度ちゃんと上司に相談したほうが──」
「わ……私が、紹介したいと思ったからって理由じゃダメですか?」
「は?」
「さ、さっき食べた苺のコンフィチュールが、すごく、すごくすごく、美味しかったからっ。だから私は、もっと色んな人に、このお店のコンフィチュールを食べてほしいと思ったんです!」
亮二の言葉を遮って力いっぱい叫んだみのりは、肩にかけた鞄の紐を握りしめた。
今、口にしたことは、嘘じゃない。
ノルマの達成なんてことは関係なく、今伝えた言葉こそが、紛れもないみのりの本心だった。
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