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「おーい、西富。お前また部長に絞られたんだって?」
──企業戦士の朝は早い。
特に金曜日は、土日を無事に迎えるための準備で、朝からこまめなメールのチェックが欠かせない。
ただし、この男──朝日町 卓(あさひまち すぐる)だけは例外だった。
無駄に長い足をクロスさせ、品の良いスーツをスマートに着こなし、プリンターに片肘をのせている様は、いかにも仕事の出来る男オーラがにじみ出ている。
「朝のミーティングでこっぴどく言われてたって、さっきそこで聞いたぜ」
「……朝日町はいいよね。うちの若手のホープは余裕の社長出勤ですか」
「はぁ? 今日はホテル・コーナーリバーTOKYOで打ち合わせしてから出社だって、昨日の帰りに言ったろ」
「えー、そうでしたっけぇー? 全然覚えてないんですけどぉー」
大袈裟にトントン!と音を立てながら印刷したての企画書をまとめたみのりは、「どいて」と朝日町の身体を押しのけ、自身のデスクに戻った。
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