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「俺で良ければ話聞くし。この後なら少し時間も取れるから、そっちの休憩スペースで──」
「……いいよね、朝日町は」
「は?」
「月末なのに、そうやって誰かを心配する余裕があるんだもん。私はいつでも自分のことでいっぱいいっぱいで……誰かを気遣う立場になんて、なったことない」
吐き出された言葉に、朝日町は眉間のシワを深くして怪訝な顔をした。
反対にみのりは、「離して」とつぶやくと、自分の腕を掴んでいた朝日町の手を解いた。
「お前……何が言いたいんだよ」
「そのままの意味だよ。朝日町には、落ちこぼれの気持ちなんて一生わからないってこと。だから、話を聞いてもらわなくても大丈夫。自分のことくらい自分でなんとかするから」
続けて口から吐き出された言葉にも、隠しきれない棘と毒が含まれていた。
こんなの、ただの八つ当たりだ。
(朝日町は、何も悪くないのに……)
それでも堪えきれなかった。
とにかく今は何を言われても苦しくなって、早くここから逃げ出してしまいたかった。
「西富、お前──」
「──ごめん、今の無し」
咄嗟に手の甲で顔を隠したみのりは、朝日町の前にもう片方の手のひらを突き出した。
自分を心配して追いかけてきてくれた朝日町に、酷いことを言ってしまった。最低だ。
改めてそれを自覚したら、今度は自己嫌悪に押しつぶされそうになる。
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