220人が本棚に入れています
本棚に追加
/178ページ
(考えてみたら、初めてフジミ青果で雨宿りしたとき、本当はヤドリギに行くつもりだったんだよね。でもあのときは、亮二さんに色々言われて、結局行くことができなくなって……)
『金を払ってまで広告を載せるには、それ相応の理由があって然りだろう』
『そもそも自分が一度も商品を買ったこともない店を、赤の他人に自信を持って勧められるのか?』
亮二の言葉を思い出したみのりは、思わず足元へと視線を落とした。
結局、亮二の言うことに影響されて、本来の目的が果たせなかったのだ。
ということは、あのとき亮二にあんなことを言われなければ、もっと早くにヤドリギにも足を運べて、部長に怒られることもなかったかもしれない──。
「……って、それも八つ当たりか」
自嘲したみのりは踵を返すと、ゆっくりと歩き出した。
フジミ青果は、今日は営業しているのだろうか。
以前、不定期営業だと亮二が言っていたし、今日はさすがに休みかもしれない。
(なんて……そんなことを考えても、もうフジミ青果には二度と行けそうにないんだけど)
先週の帰り際、亮二には『もう二度と店に来るな』と言われてしまった。
次に押しかけてきたら丸印出版に苦情を入れるとまで言われたら、さすがのみのりもお手上げだ。
最初のコメントを投稿しよう!