第一章 窓辺にて

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第一章 窓辺にて

「なるー、今日はお昼どうするー」  私たちのお昼休みは、いつもこのセリフから始まる。  私たち、というのは「なる」と呼ばれている藤牧成美(ふじまきなるみ)、つまり私を含めた文学部日本文学科一年の女子三人組である。  残る二人は三橋麻里(みつはしまり)豊田恵(とよだめぐみ)で、それぞれ「まり」「めぐ」と呼ばれている。  「三人ともひらがなだからね」と麻里はこだわっているけど、私は特に気にしていない。  だから呼ぶときはひらがなでも、文にするときは漢字表記にする。――そうじゃないと、読みにくいからね。  三人ともこの大学に入ってから知り合った仲だけど、入学初日の自己紹介で「ビビッと来た」という麻里が、私と恵に声をかけて出来上がった三人組である。  麻里はまぁ、これだけでも十分伝わりそうな元気のある子で、私たち三人のムードメーカー。  ヘアスタイルは、活発さを感じさせるショートカットで、くっきり二重のかわいい女の子。  それに対して恵は、背中までかかるロングヘアで、ヘアアレンジも豊富だし、髪飾りもたくさん持っている。  かわいい系より美人系と言えばいいのかな、目鼻立ちは整っていると私は思う。  振る舞いはおしとやかな女の子そのものだけど、決しておとなしいというわけではなく、笑顔でズバッと鋭い突っ込みを入れてくる。
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