私の理想

1/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

私の理想

 剥き出しになった電球が天井から3つだけぶら下がった薄暗い空間に、人間が3人……。 いや、4人…。 一人は寝台と言うには固そうなベッドに横たわり、麻酔もなしに体の至るところを切り開かれている。 この状況から察するに、横たわっている人物はもうこの世にはいないのだろう。  残りの3人は手術服のようなものに着替え、手は血に濡れている。 この部屋には窓がないため、辺りに漂う特有の臭いを排出できるのはたったひとつの換気扇。 懸命に自分の仕事を全うしようとファンを回しているが、あまり意味はないようだ。  「ホルマリンを二つ用意して。」 髪が長く、ひとつに束ねた女性が口を開く。 「かしこまりました。」 明るい髪の男性が答える。 残りの一人は少し体調が悪そうだった。  「貴方、休んでいていいわよ。三日寝ていないでしょう?」 顔を青くしていた女性はその声に我を取り戻すと、 「いえ!大丈夫でございますお嬢様!三日起き続けているのはお嬢様も同じでございます!」  お嬢様と呼ばれる、髪をひとつに束ねた女性はクスリと笑う。 「私は大丈夫よ。そうね……貴方には最後の行程を頼みたいから、そのために今は休んでほしいわ。」 「…かしこまりました。」  一人がその場を去ると、男性が用意したホルマリン1つづつに瞳をいれた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!