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高等部に進学してから早3か月。
バルバラ・オーネット嬢は通学前に新聞を読む習慣がある。
朝刊の一面は姜が降伏を宣言、イーヴァ王国の勝利を報じていた。
続いて二面目は、ウィンドゥ王国ブランシュ女王はイーヴァ王国とノートランド王国と協定を結び、連合軍を結成した事が書かれてある。
「第1歩兵師団投入……か。」
バルバラの父 ハインリヒ・オーネットの所属する第1歩兵師団は「陸軍最強」と謳われている。
先のラヴァル公国との戦争でも、圧倒的な戦闘力で数々の戦果を上げてきた。
そんな第1歩兵師団を戦地へ派遣するという事は、さっさと戦争を終わらせたいという事だろう。
時計を見ると少し早いが、車寄せへ向かった。
「おはよう。今日は少し曇が多いわね。」
「おはようございます、お嬢様。本日も少し暑いですね。窓を少しだけ開けておきましょう。」
運転手がドアを開けて待っていたので、後部座席に乗り込む。
バルバラがシートベルトを締めたのを確認してから、車はイーヴァ王立学園高等部へ向けて走り出した。
「初夏だというのにこうも暑い日が続きますと、野菜や果物の不作が心配ですが、予報では明日から雨だそうです。」
「近頃、ずっと晴れていたものね。正直、雨の日は苦手なんだけども、これは恵みの雨ね。」
運転手と何気ない会話をしていると、あっという間に学園に着いた。
教室へ入ると、同じクラスのエウヘニア・ローラ・ダーウィ侯爵令嬢とデボラ・シシィ・オーヴェル伯爵令嬢が既に教室に居た。
「おはよう、エウヘニア、デボラ。」
「「おはよう、バルバラ。」」
「2人とも今日は早くない?」
「そう?」
「いつも通りだと思うんだけど……。あ、そうだ。今日のランチ、一緒に出来ないの。」
「ん?そうなの?」
「もしかして……クレメント?」
バルバラの問いにデボラは少し顔を赤らめてから、コクンと小さく頷く。
デボラは卒業パーティーで一緒に踊ったクレメント・ジャック・ジラールと良い雰囲気になり、春休みの時に両家の両親公認で交際するようになった。
「もうそのまま婚約しちゃえばいいのに。」
「うん、でもいま国が大変な時だし……。」
エウヘニアは「あ……。」と声を漏らす。
「バルバラ……今朝の朝刊で見たんだけど……。」
「ああ……。大丈夫よ!第1歩兵師団よ?ラヴァル公国の戦果、忘れたの?」
「………そうよねぇ!さっさと終わってほしいものね!」
バルバラが明るく言うので、エウヘニアとデボラは心配になったが、敢えて何も言わなかった。
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