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「おじいちゃんっ!」
耳元で可愛らしい声が聞こえたと思い、虚ろになっている目を開いてその声の正体の主を視界に捉えた。
「あぁ……。ラーナか」
「そうだよ、おじいちゃん」
細くなった右の手を布団の中から抜け出させ、弱々しいその右手で我が孫の頭をそっと撫でた。
ラーナは嫌がることなく、むしろこちらが撫でやすいように頭を前に倒し、こちらへ近寄ってきてくれていた。
「げんきになるよね?」
「あぁ、もちろんさ」
「いつになったら、げんきになる?」
「どうだろうな。来年かもしれんなぁ」
「そんなにまてないよ!」
「それは困ったな」
「おじいちゃんにはまだまだおしえてほしいことあるの。だから、はやくげんきになってもらわないとこまる」
こちらをじっと睨んでくる孫の視線は決して痛いものではなく、むしろ暖かく、自分のことを想ってくれている、いわば応援のようなものだった。
「おじいちゃん、いつもの治療を……、って、ラーナ! また、おじいちゃん起こして」
「だって、ねているだけじゃおじいちゃんもヒマだもん」
「おじいちゃんは病気なの。今は安静にしていないといけないの」
「そんなこと言ったって、もうおじいちゃんずっとねてるよ!」
「いいから、これから治療するから、あなたは外に出ていなさい」
「うぅ……。またね、おじいちゃん」
「あぁ、またね」
頭を下げ、とぼとぼと部屋のドアからラーナは出て行った。
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