久遠のなかで

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  “大切な人を救えない”  ラフィアがそういったが、その気持ちは大いに理解できる。  自分の目の前で最愛の人を亡くしたあの時。  好きだった人を助けるために医療の世界に踏み入れたのに、間に合わなかったあの時。  大切な人たちを守るために、強くなりすぎた故に失ってしまった同胞たち。  その苦しさ、悲しみ、後悔。  大切な誰かを失う時に、押し寄せてくるそれらの感情。その感情によって心は埋め尽くされ、全て自分が悪いのだと非難してしまう。それを知っているからこそ、ラフィアに教えてあげないといけないのだ。  彼女よりも長く生きた人間として。彼女の想像を超える人生経験をしてきた経験者として。  そして、 フォル・ラフィアの父として。 「いいか、ラフィア」  力なく、ラフィアの左肩に自分の右手を置く。その手に力がこもることはもうない。しかし、そうやって繋いでいくことが大切なんだ。そう、今までの人生で学んだ。 「自分を責めるな。お前はできることを最大限にしてきた。だから、自分を責めることは何一つないんだ」 「でもっ!」 「お前は大切な人を救っている! 本当ならソフィアだってあの時よりも五年も早く死んでいてもおかしくなかった。ただそれを救ったのはお前だ、ラフィア」  ソフィアは生まれながらにして持病を持っていた。それは、この世界特有のものでいくらこれまでにいろんな経験をしてきたといえど、その治療魔法などの解明に至らなかった。それを何とかしていたのが、ラフィアであった。この世界で生まれただけのラフィアという女性であった。 「ソフィアだけじゃない。誰かの大切な人を救っているんだよ、我が娘、フォル・ラフィアは……」 「お父さんっ!?」  まるで最後の力を使い果たしたように、ベッドへと倒れこむところをラフィアによってそっと支えられる。 「ありがとう、そのまま寝かしてくれるか?」 「うん……」  横になって、もう目を開け、口で会話することくらいしかできなくなった。いよいよ年貢納め時である。
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