夏を求めて

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 我が家のお見送りは、家から少し離れたところに提灯を持って歩いていき、きゅうりやなすに割り箸を刺して作った馬を置いてくるという、よくあるやり方で行う。私たちは縁側から提灯を持って出発した。といっても数が足りなかったので、私はりゅうくんに提灯を譲った。私の方がお姉さんなのだから当然だ。  りゅうくんは誇らしげに先頭に立つと、夜道をずんずん進んでいき、私もりゅうくんに遅れないよう、並んで歩いて行った。 「りゅうくん、背、また大きくなったね」    足元が見えづらいから、りゅうくんが転ばないよう見ていて上げないと、とお姉さん風を吹かす気でいたけれど、りゅうくんはこの一年でぐんと背が高くなっていて、これじゃまるで、私の方が妹みたいだ。 「男の子は一年でびっくりするくらい育つな。もう、絵理も追い抜いたんじゃないか」 「りゅうくん、来年で中学生だもんねえ」  私とりゅうくんの少し後ろを歩いていたお父さんとお母さんが、しみじみと言った。 「んー……、俺、クラスで一番高いかも、身長」    りゅうくんは特に気に留める様子もなく、さらっと返した。昔は私の服の裾を掴んでついてくる可愛らしい子だったのに、少年が少しずつ大人になっていく一瞬を映し取ったその横顔は、ちんちくりんのままの私には手が届かないくらいに凛々しく思えた。いいなあ、私は早くも成長が止まって、クラスで前の方の身長のままなのに、りゅうくんはどんどんカッコよく、男の子っぽくなっていっちゃうんだ。  直視できなくなって足元に目を落とすと、りゅうくんが突然駆け出した。 「あともうちょっと!」 「こらっ、りゅう、危ないでしょ!まったく、身体ばっかり大きくなって、子どものままなんだから」  叔母さんの叱る声を振り切って、りゅうくんは加速していってしまった。  りゅうくんのバカ。そんなに急ぐことないじゃない……。私はできる限りゆっくり歩いたけれど、抵抗むなしく、私たち一行はお見送りの場所にたどり着いてしまった。
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