橘部長には愛が足りない_1

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橘部長には愛が足りない_1

 企業の採用選考解禁日、この日に大企業はこぞって内々定を出すわけだから、他社にも行ってそこで複数の内々定をもらわないように、学生の身体を拘束して自社に囲い込む。その為に、食事会なり懇親会なりがあるのだが、双葉の場合は、本社近くのホテルでのお食事会だった。  普段、バイト先のまかないか、もやしで生きてる貧乏学生には夢のような豪華なご飯だった。  牛肉なんて何年ぶりに食べただろうか……。めちゃくちゃ美味しい。  総合職はどうしても女子の割合が少ないからか、同じテーブルの他の内々定者は皆、男子だった。やたらと興味を持たれてしまい、段々会話が面倒になった私は、途中から橘部長の観察をしていた。  橘部長は三つほど離れたテーブルにいる。  今日も無表情だ。こんな美味しいご飯を食べているのに、何故頬が緩まないのか不思議だ。  でも、食べ方は上品だったから、きっと育ちがいいんだろうなあと思っていた。母にいつも「あんた口が破れてるの?!」と言われるほど何故がぽろぽろこぼしてしまう私とは大違いだ。口が破れてるというより、多分口が小さいのだと思う。  ずっと見ていたからか橘部長と目が合った。  わお!美人だ!  ついへらっと笑ったが無視された。本当に愛想笑いすら出来ないらしい。
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