橘部長には愛が足りない_1

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 橘部長の「お詫び」はお食事だった。店内は薄暗いと思うほどに照明が少ない。テーブル間隔も広く、空間を贅沢に使ってある。  半個室のような場所に案内されたが、テーブルの上に置いてあるキャンドルや卓上花がとても素敵。私は(テレビドラマで見たデートみたいじゃのう~こないな所に来るのは、きっとこれが最初で最後じゃろうなあ)と思っていた。ありがたや、きっと美味しいご飯が食べられるに違いない。  私はお酒の種類を「ビール」「日本酒」「ワイン」「甘いやつ」としか分類出来ない。メニューを渡されてもよくわからず、食前酒は橘部長に選んでもらった。  細長いグラスに細かな泡が可愛い。添えられたオレンジはいつ食べたらいいんだろうか、最初かな? 最後かな?  運ばれてきた「もっとも贅沢なオレンジジュース」を目にしてわくわくしてしまい、私は笑いながら橘部長に言った。 「ミモザって飲んだことはないけど、名前は聞いたことがあります。スパークリングワインを使うから贅沢なんですよね」 「カクテルのためだけに栓を抜くのだからそうだろうな」  橘部長は興味なさそうな顔をしていたが、気にせずグラスを持ちあげて乾杯する。 「とても美味しいです!」  私が笑っても、橘部長は無表情のまま。  ねえ、おじさん、生きてる? 「部長さんは飲まないんですか?」 「私は体質的に酔いやすい」 「あんまり強くないんですねー! 私もです。ゆっくり飲みましょう」  私がそう言うと、橘部長が一瞬戸惑ったような表情を見せた。  あ、生きてる! よかった!
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