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私の携帯電話は、駅の階段で落としたときから不思議な機能が付いた。
きっかけは、その落とした携帯電話を拾い上げたときだった。ディスプレイは誰かへのコール画面になっていた。
落ちたときの誤動作で、誰かに電話がコールされていたようだ。
『はい……』
誰かが電話に出た。えーっと、誰にかけちゃったんだろう。謝らなきゃ。間違ってかけちゃっただけだって。
あれ? この番号……?
『もしもし……?』
電話の向こうから声がする。その声に私は戸惑う。まさか、そんな、これって誰?
「もしもし……?」
恐怖心より好奇心が勝り、私は電話の向こうに話しかけた。
『え……? これって何かのイタズラ……?』
「こっちもそう思ってるんですけど……。あの……えーと……」
電話の向こうからも戸惑いを感じた。私だって同じだ。
なんだかよく知っている、なんだか好きじゃない声。でも毎日、頭の中には響いている声。
もう一度見直した携帯電話のディスプレイに表示されている名前は、
新村美南。
それは私の名前だった。
私は今、私自身と会話をしている。
21世紀の携帯電話は進化し、とうとう自分と会話できるものになったらしい。
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