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駅からの帰り道、私は、私自身と話している。
『え……本当に貴方も新村美南?』
「そう。私も新村美南」
『なんで……。でも確かに私の声だ……。録画とかで聞く私の声だ』
「そうそう、私の声ってなんか嫌だよね……って、マジでこんなこと?」
私たちはお互いを確かめるため、お互いの情報を交互に言い合うことにした。
「生年月日は?」
『2003年12月3日』
「正解」
『じゃ、家族構成は?』
「ママとパパとハタチの兄・名前は北斗。性格悪い」
『一緒だ』
向こうの私が笑った。
「じゃ高校は?」
『青城南高校。ついでに二年五組、出席番号は二十九番』
「正解。じゃ……」
この後も好きなバンド、好きな食べ物、嫌いな食べ物、いま使ってる携帯電話の機種、すべてが一致していた。
「じゃ、じゃあ……好きな人の名前は?」
『……柿谷冬真くん』
「……正解」
小学校時代からずっと好きな男の子の名前も同じだった。
同じ登校班で、同じクラスには三回なったのも同じ。
高校が違って、この頃はなかなか見かけることがなくなったのも同じだった。
ほとんど会えることもないのに、未だに好き。この気持ちは消えない。
「この切なさを分かり合えるって……そんな相手が見つかるとは思わなかった」
『私もだよ』
30分後の私が笑った。私も笑った。
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