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「でも、本当に私と喋ってるのか……。私って二人いるの?」
『並行世界とか、パラレルワールドとかそういうのかな?』
「あー、映画とか漫画でよくあるよね。それぞれの世界の私なの?」
『かも。じゃ、じゃあさ、テレビ電話モードにしてみない?』
「あ、それ面白い」
私はディスプレイの「FaceScene」ボタンを押す。これでテレビ電話になるはずだ。
果たして何が映るんだろう。
『わ……』
「わ……」
全く同じリアクションをしてしまった。
画面に映ったのは、私だった。
右上に自分の携帯で映された私が見える。そして、相手側の顔が映る画面にもまた私が映っていた。
左目の下にあるホクロも同じ、
眉の形も同じ、
今朝、うまくいかなくて外ハネしてしまった髪まで同じだった。
「わ、私なのか……」
『わ、私なんだよ……』
「信じられない」
『私もだよ』
「でもさ……」
『ん?』
「そっちの私って今、家にいるの? 私、まだ家に着いてないんだけど?」
『え、うん。私はもう家に帰ってるよ』
「……並行世界はやっぱ少しズレてるのかな?」
『今日ってさ……、何年何月何日?』
「2020年9月14日」
『同じだ。じゃあ、時間は?』
「えーっと、午後6時12分」
『……違うね』
初めて、ズレが見つかった。
『こっちは、午後6時42分』
どうやらこの携帯電話で話す私は、30分ズレた世界にいるらしい。
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