私と30分後の私

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 それから自分の番号に電話をかけると何度でも30分後の私と繋がった。  学校での出来事や起きた事件も全く同じで、違うのは電話の向こうは30分後の世界というだけだ。  ドラマの感想を話し合うならあっちには30分待ってもらわなければいけない。  もう少し時間が大きくズレていたら、テストの問題を教えてもらえたりするのだけど、30分じゃちょっとうまくいかない。  競馬とか競輪で使えるのかもしれないが、 『なんかよく映画や漫画だとギャンブルに使うとロクなことにならなくなるよね』 「ああ……だいたいバッドエンドになるよね。世のため、人のためならともかく」 『だね。まぁ……どうしようもなくお金に困ったらやろうか』  電話の向こうの私が笑う。 「そのときってそっちの私もお金に困ってるときだから申し訳ないなー。こっちの儲けたお金はそっちに送金できないし」 『あー、自分思いだね』 「自分のことだからねー」  私が笑うと向こうの私も笑った。  この世界にこれからもいろんな人と出会い、いろんな友達ができるんだろう。  でも、この電話の向こうにいる私以上にわかりあえる相手は二度と現れないんじゃないかと思う。
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