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ジョーク 95年・春
そう、ご想像の通りである。こんなことがきっかけで、私はスポーツジムに通うことになったのである。
だが仕事が早く終えたとしても、ジムに着くのが午後8時頃になる。
つまり就業日は、行けたとしても午後8時から10時までと限られてしまう。
入浴の時間を差し引きすれば、幾らも身体をいじめることは出来なかった。
だが定休日の木曜日ともなると、午後から夕方までたっぷりと時間が使えたのである。
ジムに到着するなり、受付で血圧を測定する。
まずは、ストレッチコーナーで靴を脱いでの柔軟体操をやる。
私が使用しているマットの横には、直径は2mぐらいの大きなコンクリート製の柱が建っていた。このビルの通し柱だろう。
その日は、その柱に向かって、相撲で云う、突っ張りの仕草を繰り返し行っている女性が居た。まるで相撲の鉄砲稽古である。
私はその人物がなす動作と体形があまりにも似合っていたため、つい言葉が出てしまった。
「危ないですよ!あまり強く押さないで・・もしかして崩れるかも・・」
と、私は天井を眺めた。
その女性は私の声掛けに、少しばかり驚いたようだが、こちらを向いたかと思うと、苦笑いしながら立ち去っていったのである。
どうやら、私のジョークが通じたようだ。
私が仕事以外で初対面の女性に声掛けするなど、およそこれが初めてのことだった。
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