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タワーマンションは、愛の巣
川崎市内のJR線駅近くのタワーマンション二十四階のとある部屋に、たくさんの荷物が運び込まれていた。
若くして大手流通グループ中核会社の常務に抜擢された三神恭一(28)と、その妻の絵絵里奈(25)が引越しに立ち会っていた。
絵里奈は、とても美人とは言い難い。
簡単に言えば、ブスである。
しかも、世間知らずで天然ボケ。
良い言い方をすれば、ピュアで純情だ。
悪い言い方をすれば、不細工な上に、抜けている。
「ねえ、恭一さん。今日から、ここが新居になるのね! 新しい生活、楽しみだわ!」
乳飲み子を抱えた絵里奈が、顔をパッと明るくして言った。
目が腫れぼったい一重で、小鼻が少し横に広い。唇が薄く、エラが張っていた。
知恵が回るというほどでもない。
気が付くというわけでもない。
敢えて言えば、いつも屈託ない明るい顔で笑うのが愛らしい。
というのが、取り柄と言えば取り柄だ。
この日、絵里奈は、長い黒髪を束ねずに肩まで伸ばしている。
ベランダから、窓の外を見ると、ビル群が霞んで見える。
「ああ、オレと君と、そしてこのチビが、ここで思い出をたくさん作って、新しい未来を創っていくんだ」
恭一は、にっこりとほほ笑んだ。
ライトブラウンの柔らかな髪の持ち主で、細い目に薄い唇、鼻梁が高く、小鼻は引き締まっている。
身長は、170センチを少し超え、がっちりとした体格をしている。
いわゆる「細マッチョ」である。
二人は、引っ越しの荷物を開けていた。
「ん? これは、誰のものだ?」
包みには、「ワレモノ注意」と書かれていて、差出人は、「AAプランニング」と書かれている。
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