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政略結婚
あて先は、住所と三神様となっている。
「え? 私、知らないよ」
絵里奈は、ぽつりと言った。
「そうか……。開けていいか?」
「え、ええ。どうぞ」
包みを開けると、一面のアンティークの手鏡が出て来た。
「ん? これは。手鏡……?」
濃い青み掛った金属製の黒い柄に、赤いフレーム。
磨き抜かれた鏡がはまっている。
鏡面の裏には、木々に囲まれた青く澄みきった湖、それにその傍らには、ギリシャ神話に出てくるような女神像が描かれていた。
上半身は美女で下半身は蛇で背中に翼が生えた姿をしている。
見方によっては、悪魔の様にも見えなくもない。
(この女神の姿、どこかで……)
恭一が、それを眺めていると、後ろから絵里奈が抱きついてきた。
「あれぇ? こんな可愛い手鏡。元彼女からの常務昇進祝いかなぁ?」
覗き込んだ絵里奈が、冗談半分に言うと、穏やかだった恭一がキッと睨みつけた。
チッ
「……馬鹿なこと言うな。オレが愛しているのは、お前だけだって、言ってるだろ?」
プレイボーイの恭一は結婚前、かなりの浮名を流したことを絵里奈は知っている。
絵里奈は、そのことをかなり気にしていた。
「そ、そうね。ごめんなさい。私は、あなたを信じてるから」
恭一は、ふっと笑顔に戻り、絵里奈の肩を抱き寄せた。
「オレにはお前しかいない。幸せになろう」
恭一は、絵里奈をぎゅっと抱き締めた。
「嬉しい……」
二人は、唇を重ねた。
そして、舌を絡め合わせて、そのままソファーに倒れ込んだ。
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