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 翌日、夏休み初日。努はいちかの家を訪れていた。  「付き合って初日から会わないのはマズい」と考え、断捨離の手伝いを申し出たのだ。 「重い物運んだり掃除したりするからさ!」 「業者に頼むから、間に合ってる。それより、他に手伝って欲しいことがあるの」  いちかの家は住宅街の一角にある一軒家だった。水色の三角屋根が可愛らしい。  ドキドキしながらインターホンを押すと、「はーい」と家の中から声が聞こえた。ドタドタと足音が近づき、玄関のドアが開いた。出て来たのは割腹のいい女の人だった。 「どちら様?」 「あ、俺、一夏……いちかさんとお付き合いしている葉月努と申します! いちかさんの断捨離を手伝いに来ました!」 「まぁ! いちかの彼氏? どうぞ、入って入って」  いちかの母親だというその女の人は嬉しそうに顔をほころばせ、努を家に招いた。そのまま階段を上り、二階にあるいちかの部屋へ案内される。  いちかの部屋はドアが開けっ放しで、廊下には大量の家具が出されていた。部屋の中も物が乱雑に置かれ、足の踏み場もない。  いちかはそんな有様の部屋の中央にしゃがみ、雑誌をめくっていた。 「いちか、彼氏の努君が来てくれたわよ」 「ん。入って」  いちかは雑誌に視線を落としたまま、努を手招きした。 「お、お邪魔します」  努は緊張で全身を硬らせ、恐る恐るいちかの元へ近づいていった。想像していた部屋とはまるっきり違ったが、いちかの部屋というだけで、ドキドキした。 「それじゃ、私はお茶を持って来るわね。努君、ゆっくりしていって」 「は、はい!」  いちかの母は嬉しそうに「うふふ」と笑い、階段を下りていった。 「そこにある服、」 「服?」  いちかはクローゼットの前に山積みになっている大量の服を指差した。 「君が選んで。一週間分、七枚。あとは捨てるから」 「えっ、俺が選んでいいの?」  いちかは頷いた。 「付き合ってる間、君が好きな服を着てあげる。私が選ぶと、Tシャツと短パンばっかになっちゃうから」  いちかの言う通り、今日の彼女は黄色い無地のTシャツにジーンズ素材の短パンを履いていた。いつものいちかとは違う、活発的な格好だ。  努は「今日みたいな一夏さんも好きだな」と密かに思った。 「それなら任せて! 一夏さんが着ないような服を選ぶから!」  努はやる気満々で服をあさり、残す服を選ぶ。しかしどれも似たような服な上に、スカートがほとんどなかった。  努は悩んだ末、いちかに尋ねた。 「ねぇ、断捨離が終わったら暇?」 「まぁ、一応」 「じゃあさ、一緒に来てくれない? 行きたい場所があるんだ」
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