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6
その後も努はいちかとデートを重ねた。
彼女の都合に合うよう、なるべく人混みを避けた。他にも、肌を露出したり、極度に寒いところや暑いところを嫌ったため、避けるよう心がけた。
デートを重ねるうちにいちかは努に心を開くようになり、笑顔も見せるようになった。
「あははっ、楽しい!」
「じゃあ、夏休みが終わっても付き合おうよ」
「それは無理ー!」
しかしどんなに距離が縮まっても、いちかは頑なに期限を守り続けた。
何度も努が「夏休みが終わっても付き合おう」と言っても、頷くことはなかった。
夏休みはあっという間に過ぎ、最終日になった。いちかと恋人なのも、今日で最後。
努はいちかとデートすることばかり考えていたせいで、宿題をほとんどやっていなかった。さすがにマズい、と恥を承知でいちかのもとを訪ね、宿題を見せてもらえないかと頼んだ。
「いちか、悪いけど宿題写させてくれない?」
すると彼女は即答した。
「やってない」
「……やって、ない?」
予想外の答えに、努は固まる。あの優等生のいちかが宿題を忘れるなど、冗談としか思えなかった。
「ど、どうしてやってないの? いや、俺もやってないけど」
「もういいの。やっても意味ないから。それより、今日は最後の日でしょ? どこも行かないの?」
いちかは投げやりに言った。いちかからデートを催促するのは珍しいことだった。
その気持ちに答えたいと思う反面、宿題をやらなかった場合に親と担任からどんなに怒られるかと想像すると、恐ろしかった。
「今はそれどころじゃないって! 今日中に宿題終わらせないと!」
努はいちかを押し除け、家に上がり込んだ。夏休み中、たびたび遊びに来ていたせいか、いちかの家は努にとって、もはや第二の家と化していた。
「……そうね」
いちかは寂しげに目を伏せる。努はいちかの表情の変化に全く気づいていなかった。
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