第三日:「ツバメ」

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第三日:「ツバメ」

「…そのツバメがね。おかしなことを言ったんだよ。」 売れ残りだという饅頭を勧めながらの老人の言葉に私は「…はあ」と相槌を打つ。 同じ名字の多い集落。海沿いにある菓子屋の客間。 昔ながらの家屋の高い天井には大きな神棚が飾られ、背の高い仏壇や鴨居に並べられた数々の賞状、この家の先祖の写真が私に威圧感を放つ。 「…旅の人、ここにいても暑いだろう。バスもあと二時間は来ねえし、良かったらうちで茶でも飲んでいかんかい?」 …バス待ちの際にかけられた老人の言葉に、軽い気持ちでついて行ったことを私は早くも後悔し始めていた。
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