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「…雛は人の顔をしていたんだ。」
そうして、老人は神妙な面持ちで茶をすする。
「見間違いかもしれんが、その時は確かに俺と同じ人間の顔のように見えたんだ…しかも、そいつは俺が寄ってきたと見るや口を開けて確かにこう言ったんだよ。」
『お父…すまん。俺、8月に逝くわ。』
「で、雛は死んじまった。俺は可哀想に思ってな、その場で死骸を埋めてやったんだが、どうもそれから雛の言った言葉が引っかかる。」
…老人には息子が一人いた。
今年、40に手が届くという都会で働く息子。
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