旅怪（りょかい）

第一日：「荷札」

…旅先で妙な話を聞いた。

「札が下がっとるだろう？これをな、未だにぶら下げるもんがいるんだよ。」

そう言って道端のコンクリートに座った老人はタバコで上を指す。

田舎道の電線。山沿いに並ぶ各家庭をつなぐ送電線。
その一角に大量の荷札がぶら下げられている。

何も書かれていない荷札。

その隙間は等間隔とまではいかず、いくつか端に寄ったものや劣化が進み紐がちぎれかけているものさえあった。